Re:スタート
俺は歌手になりたいんだ。


……なるんだ。


世界で一番、輝いている歌手。

自分のこの想いを届けられる歌手。

絶対になるんだ。


俺は手に持っていた写真立てを、そっと靴箱の上に置いた。

今度は伏せた状態じゃなくて、しっかりと写真が見えるように……。


佳奈も笑っている。

俺も笑っている。


佳奈がどこにいるかなんて今は分からないけれど、大丈夫だ。

佳奈は今、笑っているはずだ。


笑っていてほしい。

佳奈が笑っていないと、俺は元気が出ないよ。

頑張れないよ。

佳奈のあの笑顔を見るために、今までも、今日までも頑張ってきたんだから……。


……なんだか、久しぶりにあの公園に行きたくなってきた。

今なら楽しくギターを弾けそうだ。

俺は一度履いた靴を脱ぎ、部屋に戻りギターを抱える。


ギターとノート、ペンを持ち、アパートの部屋を出る。

向かうはコンビニじゃなくて公園。

あの公園に行けば、どんな状況でも笑えそうな気がするんだ。


一種の願掛けかもしれない。

俺だけの願掛け。

佳奈と出会った場所に行くってことは、初心にかえるということ。

初心を忘れちゃいけないよな。


俺は、先ほどとは違う軽い足取りで公園に向かった。
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