Re:スタート
「深山さんには受付全般をやってもらいたいの。9時半になったら整理券を配ったり、11時には来場してくれた人にドリンク券を渡すとか」

「はいっ! かしこまりました!」



私はズボンのポケットに入れていたメモ帳とペンを取り出して、メモをする。

それで、12時になったらライブスタート、と。

そんな私の様子に少し驚いた坂本さん。



「えっと、それから。来場チケットは全部前売りだから、レジを通す必要がないの。任せられるかしら?」

「はいっ。分からないことがあったら聞いてもいいですか?」

「もちろんよ」



しびれる。

体がしびれる感覚になった。

久しぶりの社会復帰。

日雇いで一日限りではあるけれど、それでも高揚感に包まれていた。


坂本さんは威圧感がない。

だけど、立ち振る舞いが『ああ、この人がオーナーなんだな』と分からせてくれる。

初めてこのライブハウスに来たけれど、先輩たちも優しそうだ。

私と一瞬でも目が合うと、にこっと微笑んでくれる。


温かい空間。

直感的にそう思った。
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