Re:スタート
「音楽って本当に魔法の世界ですよね」



私はお母さんとお父さんに微笑みかける。

少し照れたようなお母さん。



「ええ、本当にそうですね」



そう言って笑顔を見せてくれる、お母さんの目は輝いていた。

今日という日を楽しみにしてくれていたことが伝わる。

親子は整理券を受け取ると、頭を下げて列から離れた。


素敵な親子だったなぁ。

ライブハウスが魔法の世界か……。

そんなこと、考えたこともなかった。


だけど思い返せば、悠が歌ってくれた曲にも不思議な力があったんだよなぁ。

心が安らぐと思えば、心が躍る。

悲しいことがあっても、楽しい気分にさせてくれる。

そんな不思議な力。



「整理券、2枚くださーい」

「はいっ。お待たせしました!」



私は意識を戻し、整理券を渡す。

来てくれた人、全員が笑顔を浮かべていたことが印象的だった。


整理券を配り始めてから30分。

手元に整理券がなくなったので、一つ仕事が終わった。


私は坂本さんに報告するため、ライブハウスの中に入る。

ライブハウスの中はガンガン冷房が効いていて涼しかった。

太陽の日差しと気温で汗をかいていた私には、ちょうどいいくらい涼しかった。
< 94 / 224 >

この作品をシェア

pagetop