掴んだその手を離さないで! 〜優しすぎる幼馴染の絶対愛〜
淳之介のマンションは駅を挟んで反対側にあった。
高架をくぐってすぐの距離だ。

マンションにたどり着く頃には雪が本降りになっていた。
ひょっとしたら積もるのかもしれない。


8階建ての4階部分にある1LDKの部屋。
大学生が住むには少し広い。

室内は暖かく、家具は最小限で、木目とアイアンのライティングデスクにローテーブルがあった。

そして『人をダメにするソファ』で有名な、大きな若草色のヤギボーがひとつ置いてあった。
奥の部屋には少し大きめのベッドが見える。
全体的にシンプルで、ナチュラルな色目。

優しい……。

第一印象は『優しい部屋』だった。
この部屋は淳之介そのものだ。

「今、風呂を入れたから。
すぐに入るよ。体の芯まで温まってこい。
いや、突然温めたら霜焼けになるか?
……ったく、なんでこんなに冷たいんだよ!」

そう言いながら、私の両手を淳之介の両手で挟み、熱を送るように擦り続ける。

正直、もう感覚がない。

ただ、暖かい部屋に入ったからか、頬がやたらと熱い。

淳之介が手を温めてくれている間に湯はり完了の音がした。

「……着替え、俺のジャージ出しておくから、早く行ってこい。よーく温まってこいよ」

「……ありがと……」




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