掴んだその手を離さないで! 〜優しすぎる幼馴染の絶対愛〜
「その人とね、一緒に星を観るんだって……」

環にとって、それは一番辛いことだ。
星バカの拓郎を理解できるのは環だけだったから。
傍に居たのはいつも環だった。

「……拓郎から言われたのか?」

「ううん。聞こえちゃったの……。
寝付けなくて、夜明け前に庭を見たら拓郎がいて。話をしようと思って、私も庭に出たら……拓郎、電話してた……ナツミさんっていう人と」

……そういう事か。
さっきのメッセージと完全に繋がったな。

拓郎は結局、自分自身の感情には気付き始めていたが、環の想いに気付くことはなかった。
今後も気付くことはないのだろう。

もし高校時代に知っていたら、何か変わっていたのだろうか…

いや、今となってはわからない。
おそらく拓郎は『出逢ってしまった』のだ。お互いを尊重し、愛し合える相手に…
それが環ではなかったということ。

「淳くん……知ってた?」

「いや…………さっき知った」

「え」

言おうか言うまいか悩んだが、環に嘘はつきたくなかったので、正直に言うことにした。

「……拓郎から空港に来るかって連絡があって……それは断ったんだが…」

「……」

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