掴んだその手を離さないで! 〜優しすぎる幼馴染の絶対愛〜
スマホの画面を見ながら、まだ見ぬ我が子に思いを馳せた。

最寄り駅に着いたが、まだメッセージに返信がない。

合鍵は持っているけど、実は使ったことがないのだ。

渡された時、いつでも勝手に入っていいからとは言われているんだけど…
大抵は一緒に帰るか、迎えに来てくれるから、鍵を出す必要がなかった。

それに、なんとなく主のいない部屋に勝手に入ってはいけないと思う私がいる…

「どうしようか…」

お腹が空いた。
貧血があるから、鉄剤を出されている。
お薬を飲むためにも、何か食べたいんだけどな…

もう一度スマホを取りだし、メッセージを送る。

《駅に着いちゃった
まだ帰れそうにない?》

《暑いから、マンションで待ってるね》

今は体が優先だ。
仕方ない。鍵を使わせてもらおう。

改札を出て、駅の高架下にあるお弁当屋さんに立ち寄ろうと歩いていく。

「環……?」

通りすがりに声をかけられた。

「え?」

振り向くとそこに、拓郎がいた。









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