掴んだその手を離さないで! 〜優しすぎる幼馴染の絶対愛〜
そこで初めて拓郎が、冷蔵庫を覗き込んでいる環を見た。
足元にはもちろん水色のもこっとしたスリッパ。

「淳くん、おつゆとネギがあるから、素麺ならすぐにできるよ?
玉子焼きも作ろうか?」

「え、いや……ああ、うん」

「拓郎は? 麦茶?
あ、拓郎もさっきのサンドイッチじゃ足りないよね?
素麺食べる?」

「……」

「拓郎……?」

「……ハッ、や、お、俺はさっきので充分……いや、やっぱりもらおうかな。うん」

「わかったー」

……まあ、この展開は驚くよな……
俺自身が一番驚いてるかも

それから環はキッチンで素麺を作り出した。


「おい、俺、何も聞いてなかったんだが……」

「……ああ、うん」

声を潜めて話す拓郎。
俺も同じように声を落とす。

「考えてみれば、この駅に環が偶然居合わせた時に気づくべきだった」

「……同時間にメッセージが入ってた。絶対に駅で鉢合わせしているだろうと思ったんだ……案の定だった」

「付き合ってたんだ」

「……まぁ」

< 185 / 278 >

この作品をシェア

pagetop