掴んだその手を離さないで! 〜優しすぎる幼馴染の絶対愛〜
拓郎には今女がいるとわかっていても、高校時代、拓郎が環を好きだったことに気づいていた。

これって抜けがけって言うんだろうか。

妙に居心地が悪い。

「……幸せなんだ?
まあ、この部屋を見れば一目瞭然か」

玄関に置かれた水色のスリッパ。
対で置かれた赤のヤギボーミニ。
その上には環のお気に入りのウーパールーパーのぬいぐるみまである。


「……そっか。意外だったけど良かった。お前なら環を幸せにしてくれそうだ」

「拓郎……」

「でも、お前は美由紀を好きなんだとばかり思ってたよ」

「美由紀? 有り得ないだろう」

「そうか? 美由紀のこと、大事にしているように見えたが…」

「あいつは妹だ。それ以上に思ったことは一度もない」

「……そうか」

「美由紀、結婚したんだ」

「は? いつ?」

「今年の春。高等部の教師で……まあ社内恋愛みたいな感じだな。
俺も親しくさせてもらってる乾公親先生だ。俺たちの3学年上だ。いい人だよ」

「そうか……あの美由紀が…
俺、浦島太郎状態だな。
随分時は流れたようだ」

「お前が連絡してこないからだろう?
こっちに全く帰ってこないし」

「それは悪かったと思ってる」

そう言った後、拓郎は考え込むようにヤギボーに沈んでいった。








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