掴んだその手を離さないで! 〜優しすぎる幼馴染の絶対愛〜
そんな中、夏休み直前の引越し屋のバイトで、同じ大学の1学年上の先輩と交流が出来る。

そして、その人が所属する観測チームに参加させてもらえることになったのだ。

それから拓郎の生活は変わった。

バイトの接客以外で喋ることもなかった日々から一転、観測チームの皆と打ち解けていった。

「正直、入学した当時は地獄だった。
毎晩夢に生徒会室が出てきた。
未来科学館の屋上にいる時もあったな…
夢の中では、淳や環とゲラゲラ笑っていて…
でも目が覚めたらアパートの自室に1人だ。
気が狂いそうだった……」

「拓郎……」

「悪かったな、連絡できなくて。
でも逃げ出したくなかったんだ。
弱い自分に嫌気が差していたけど、逃げ帰るようなことだけはしたくなかった」

「……お前は頑張ったよ」

「淳……」

「拓郎、頑張ったんだね」

「環……」

大阪を離れたことがない俺には分からない苦労が、きっとたくさんあったことだろう。

「やっぱり、いいな……
淳と環はいつも俺を無条件に受け入れてくれる……
自分の事のように喜んでくれる…
高校時代は、いつもお前達に支えられていた。二人が居れば、なんだって出来ると思ってた。
離れてみて、俺は2人にどれだけ支えられていたのかよく分かったんだ。
今更だけど、感謝してる。
ありがとうな」

拓郎が頭を下げた。
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