掴んだその手を離さないで! 〜優しすぎる幼馴染の絶対愛〜
本当は、環に告白するつもりだったのだ。

あの文化祭の頃から、俺はずっと環を目で追っていた。

「とことん向き合ってみなさい」

川原さんに言われた言葉だ。

目で追っている理由……さすがの俺も自覚する。
俺は環が好きなのだと。
その想いは、咲希に対するものとは全く違ったものだった。

欲望を満たすために付き合おうとしてきたあの時とは違い、環を大切に想っていた。
環は唯一俺を理解してくれる女。
生意気なのに、健気で可愛い。
大切にされるべき女だった。

ただ、すぐに告白するつもりはなかった。
俺には受験がある。
環も応援してくれているのだ。
結果を出さなくてはいけない。

受験が終わったら、必ず告白しよう!
ずっとそう思って、頑張ったのだ。

それなのに、念願の合格の後はまさかの引き継ぎに追われた。

そして何も告げられないまま、俺は仙台へ。

この時はまだ気づいていなかった。
帰省すればまた環に会って、その時にはちゃんと告白をして付き合い始めるのだと……楽観的に考えていた。

しかし、俺は何も分かっていなかったのだ。距離が離れるということがどういうことなのかを……。
< 235 / 278 >

この作品をシェア

pagetop