掴んだその手を離さないで! 〜優しすぎる幼馴染の絶対愛〜
そんな中、夏休み直前のバイトで、少し気の強い女に出会う。

引越し屋のバイトなのに、その女は普通に入っていて、重い荷物もサクサク運ぶんだ。背格好は環とほぼ同じ。少し高めの身長で痩せ気味だ。けど力が半端ない。

すげー女だな、と感心していたら、その女が言ってきた。

「何をジロジロ見てるの?
女が引越しのバイトってそんなに珍しい?」

「い、いや…」

見過ぎたか…

「学生は効率よく稼がないと、やりたいことをやる時間がなくなっちゃうでしょ?
私はバイトをする事が目的じゃないの。
ちゃんと大学で学んで、好きな研究に専念したい。だから効率よく稼ぐことが目的なの。
不定期だけど、もうここでの歴は長いわ。
女だからって、遠慮しないで。
どの荷物でも運ぶわよ」

そう言って、被っていた帽子を脱いだ。

え?
環!?

その女は顔も環によく似ていた。
ただ違うのは環より髪がずっと長いところ。
結んだ髪を解き、もう一度しっかり結び直し、また帽子を深々と被った。

環に似ているけど、環じゃない。
でも俺には衝撃が走った。

一瞬、環はどうしているだろうか…
思いが大阪に行きかけた。

しかし、すぐに思い直す。
俺は今、何か大切な事を聞かなかったか?
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