掴んだその手を離さないで! 〜優しすぎる幼馴染の絶対愛〜
ここは星を観るところ。
少しのスマホの明かりも、せっかく暗闇になれた目には悪い。
みんなに迷惑をかけてしまう。

「あ、おいっ」

「拓郎くん? ちょっといいかな?
アンタレスの横に見えているぼやっとしたあかりが気になって…」

話しかけてきたのは春に入会された60代半ばの男性。
定年退職後に、元々好きだった星を観たくて天文サークルに入会された、とっても熱心な川原さんだ。奥様と一緒に参加されている。

「あ、ああ…それは……。
川原さん、見に行きましょうか」

良かった。
川原さんの登場で、これ以上の追及は免れたみたい。

私もボロが出るのは困るから。

階下へ降りる階段は眩しい。
当たり前のことだけれど、普通に電気がついているからだ。

せっかく暗闇に馴らした目だけど、仕方ない。
< 62 / 278 >

この作品をシェア

pagetop