掴んだその手を離さないで! 〜優しすぎる幼馴染の絶対愛〜
あれ?
いつもならここで、私の投げかけたノリについてきてくれるはずなのに……?

拓郎らしくない。

「はい。まだ冷たいから。
半分になっちゃってるけど、喉乾いたでしょう?」

私はさっき貰ったラムネを拓郎に差し出した。

30分の語りの後に、汗をかくくらい走ったんだもの。水分補給も必要だ。

「……ああ、サンキュ」

「ねぇ、拓郎も一緒に回ろう?
あと40分くらいしか、自由時間はないけど。
プラネタリウムもいいけど、文化祭だって、学園の生徒として楽しみたいじゃない! ね?」

「……いいのか?」

「当たり前だろう?
それに、生徒会長として、見回りも必要だと思うけど?」

「そ、そうだな!
……なんか、急に腹が減ってきた……」


ひょっとしたら拓郎にとっても、今回の咲希ちゃんとのことは、友情の危機だと思ったのかもしれない。

明らかな後悔と謝罪の気持ちが見て取れたから。

そして私たちは、束の間の自由時間を楽しんだ。

久しぶりに3人で、何も考えずに楽しみたかった。

拓郎の挨拶のように、今日は青春の1ページ。

文化祭が終われば、もうこんな時間はあまり残されていないことを、私達はわかっていたから……。


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