掴んだその手を離さないで! 〜優しすぎる幼馴染の絶対愛〜
合格から東北への引越しまで、たったの1週間しかなく、急ピッチで準備を進めていた。

拓郎は元々東北の大学を希望していたし、わかっていたこととはいえ、進学が決まった当初の環は寂しそうにしていた。

あの文化祭の後、拓郎ははっきりと咲希に別れを告げた。

ただの口喧嘩だったと関係を誤魔化していた咲希だったが、彼女にもプライドがあったのだろう。

自分のことを全く大切にしてくれない男に執着するのは諦めたようだ。

そして、拓郎はその頃から環を意識するようになっていた。

自分にとって、誰が一番必要で、心を許せる大切な存在なのかということにやっと気づいたのだろう。

もちろん、環の美しさにも気づき始めていた。

環自身はいつも自分のことを『地味』だと言う。

しかし彼女は決して地味なタイプではなかった。

凛とした芯の強そうな目、透明感のある肌、艶のある柔らかそうなストレートの髪。

昔からどこをとっても美少女の片鱗を見せていたし、実際に彼女に惚れる男も出てきたのだ。
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