掴んだその手を離さないで! 〜優しすぎる幼馴染の絶対愛〜
翌日は学園の成人式。
私は学年が違うから行けない。

結局、二人っきりになる時間などなく、拓郎が帰る日がやってきた。

その日は朝から冷え込みが激しく、夜明けから雪の予報が出ていた。

まだ誰もが寝静まっている夜明け前の早朝、私は2階の自分の部屋から庭を見下ろしていた。
昨夜はなかなか寝付けなくて、2時間程しか寝ていなかった。

ずっと考えていたのだ。

明日、拓郎が大学に戻ってしまったら、次はいつ会えるのだろう。

拓郎はまたしばらく帰ってこないだろう。

実家は年の離れたお兄さんが継いでいる。だから拓郎は自由なのだ。

元から大学院にも進みたいと言っていたし。ひょっとしたらそのまま大学に残ることも考えられる。

私達にはこれから先、接点があるの?

私が東北の大学を選べば良かったのかしら……。

このまま、ずっと片想いを続けるの?

思い続ければ、いつか拓郎に伝わる?

そんな思いが交錯して、眠れない夜を過ごし、窓から庭を眺めていた。

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