桜の誓い
「誰か!!誰か来てくれ!!」

大声で助けを求めながら咲也は浅葱に駆け寄る。震える体を抱き締め、力の全く入っていない手をただ握り締め、突然起きたことに混乱し、恐怖に負けてしまいそうな己を心の中で叱責する。

(落ち着け、僕が取り乱してどうする。今一番恐怖を感じているのは浅葱様だ!)

駆け付けた侍女がまた人を呼びに行き、浅葱は布団の上に寝かされ、医者の診察を受けることになった。屋敷にやって来た医者はしばらく浅葱の様子を見た後、難しそうな顔をする。

「何故、このような症状が出ているのか全くわかりません……」

「そんな……!一体どうして……!」

医者から告げられた絶望的な言葉に、咲也は取り乱してしまいそうになる。浅葱の冷たくなっていく手を握り締め、その瞳からは涙が溢れていった。

初めて見た浅葱は、咲也が思い描いていた人そのものだった。雪のように白く美しい肌を持ち、長い黒髪は艶やかでまるで絹のよう、女性らしい丸みを帯びた体は細すぎず、顔立ちは一輪の花のように美しい。
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