モノクロと二つの音
岡田先輩はまだ顔を青ざめていてそのまま帰っていった
その間に私は立ち上がって涙を拭く
「きったないよ、制服汚れてる
これ使って」
彼女は私にハンカチを渡してきた
「……ありがとう」
私はそのハンカチを受け取って涙を拭いた
「怖かったの?悔しかったの?」
彼女から聞かれるとまた涙が溢れる
怖かった…初めて男の人の力を目の当たりにして
このまま何されるかわからなかった
でもそれ以上に…悔しかった
先輩の言葉で私のピアノが価値のあるものだと思ってたのに
騙されてこんなことになってしまっている
こんな私を見て彼女は
【ガバッ】
私を抱きしめてきた
小さな体なのに何故か暖かい
金髪の髪が私の顔にかかる
……人の温もりだ
「何も言いたくないなら何も言わなくていい
黙ってたってあんたのピアノから、伝わるものがあるんだよ」
「ありがとう!加藤さん!」
「……鬼頭なんだけど」
私の人生はピアノばかりだった
でも、鬼頭紅衣との出会いは
ピアノと同じく、私のモノクロの世界を変えてくれるのだった