初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが
「それでは失礼しますわ」
時間にして十五分程のやりとりだっただろうか。
その間立たされたままだったリエラは、するりと踵を返した。
その様子を顰め面、無言で見送るセドリー令息と、その隣に張り付いて、まだうるうるしている女性にちらりと視線を向ける。
(私もうるうるする生き物が好きだから、気持ちは分かるわ。犬とか猫とか、可愛いものね)
リエラはふっと口元を綻ばせた。
「私はそちらの方のようにはなれませんから」
そう口にすればセドリー令息は満足そうに口元を歪ませた。
「ふ、ふん。そうか……」
けれどそう勝ち誇った顔の令息に、リエラは内心で舌を出す。
(当然、私は犬猫のようには生きられません)
けどまあ、犬猫にも劣ると言われたらぐうの音も出ないけれど。どうせそんな可愛らしさを持ち合わせていない事は、とっくの昔に存じ上げているのだ。
フンと内心で悪態をつき、リエラはさっさとその場を後にした。
そして翌日から醜聞に巻き込まれた。