初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが
「──その話は明日王城でするつもりだよ」
「あら、お父様」
リエラは顔を綻ばせた。
腹ばいを止めておいて良かったと思う。大好きな父に眉を顰められるのは流石に悲しい。
既に開いていたドアを軽く叩き、父──アロット伯爵はリエラに優しく微笑んだ。リエラもにこにこと笑顔を返す。それから父は兄に困った顔で向き直った。
「レイモンド、もう少し相手を選びなさい」
そう言われ、兄の動揺は増した。
(ふ、ざまあみなさい。お兄様って容姿はお父様に似て素敵なのに中身はイマイチなのよね)
兄は眩い金髪に深い青の瞳で、羨ましいくらい父と母のいいところ取りの容姿なのだ。
父の整った容姿に母の美しい色彩。リエラは父親似全開で、顔立ちは祖母に似て色彩は父と同じである。
父親が大好きなのであまり悲観した事はないのだが、羨ましく思わない事はない。
(まあ、でも人間中身よね。そうなのよ……)
レイモンドに余計なお世話だと叱られそうなので口にした事は無いけれど。リエラは内心で溜息を吐いた。