初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが
「しかし、殿下の名を出されては……」
「そうだとしても相手の素性を調べはするものだし、あちらが王族という訳ではないのだから、断る事も出来ただろう」
……どうやら父にはお断り案件だったようだ。王家の名を出されては無理かと思っていたけど、やっぱり流石は我がお父様である。
私のお父様、素敵とニコニコしていたら、父がくるりとこちらに向き直った。
「リエラ、お前も明日一緒に王城に来なさい」
「え? わ、私もですか??」
貰い事故である。
リエラが驚きに固まっていると、兄のせせら笑いの気配を感じた。
「勿論私もレイモンドも行くけれど、殿下がお前に謝りたいそうだからね」
「えっと、私は別に……殿下からの謝罪を受け取るような立場ではありませんもの……お父様とお兄様だけでよろしいのでは?」
(行きたくない……)
リエラは異性限定で人見知りだった。
それなのに第三王子殿下だなんて……不敬を働いたら大変な事くらい理解出来る。
「そういう訳にはいかないよ、こちらの不手際も否めない状況ではあるけれど、心無い噂に殿下は心を痛めていらっしゃるようだからね。当事者の君の謝罪は必要だよ。分かるね、リエラ?」
「、はい……」