初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが
シェイドがクライドからのお土産を取りに退室したところを見計らって、リエラは殿下の執務室から外に出た。
父たちは(レイモンドも連行)一足先に出て行ってしまったので、室内には待機中の侍女が一人。
申し訳ないが急用を思い出したと告げ、足早に部屋を飛び出して今に至る。
(だってシェイド様と二人で話すとか、無理! 何の罰ゲームよ?!)
パタパタと王城の回廊を進みながら背中に流れるのは嫌な汗だ。
子供の頃のシェイドは可愛らしかったけれど、少し無神経な方だった。リエラに自分の親への説明を求めたところなんて特に。
あの時はお前のせいだと、お前が自分を好きになったからだと咎められたようで、割と落ち込んだ。
それでも確かにシェイドの容姿ならリエラよりも家格が上の令嬢なんて容易く見つかるだろうと思ったし、それこそ彼の好みの人を捕まえる事だって簡単だろうと思った。
『ウォーカー様ならもっといい出会いがありますよ』
だからこそ放った言葉だったけれど、彼はその飛び抜けた容姿は隠し、内面を磨いた。それだけでもう、リエラの言葉が如何に陳腐で、シェイドの心を傷つけていたか、想像に難くない。
(私はシェイド様の上辺だけしか見ていなかった……)
自分が恥ずかしくて堪らない。
そうして王族の側近として社交界で度々姿を見るようになったシェイドを見れなくなって、リエラは婚活をサボるようになったのだ。