初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが
06.
目を丸くしたリエラに溜飲でも下げたのか、アッシュが得意げに女性の腰を抱いた。
「当然だろう、クララは私の愛する人だ。二人で国王陛下に真実の愛を訴えれば、私たちの言葉が誠だとお分かり頂ける!」
──だから入れて貰えなかったんですよ!
リエラは絶句した。
想像以上の令息の思考についていけなくて驚いてしまう。しかも国王陛下に謁見て……
「私の尊い血を以てすれば当然の事だ!」
「……」
えっと、何でしょうか、この人。
陛下の甥は確かに凄いと思うけれど、履き違えてはいけない。そもそも陛下と彼の血は繋がってないのだから。
……それにしても、どこから来てるのだろうこの自信は……
(この人の教育係さん、至急逃げて下さい。あなたの首が飛ぶかもしれません……)
そんなアッシュとリエラのやりとり(?)を、彼の最愛のクララは両手を組み、相変わらず目をうるうるさせて見つめていた。
(……大丈夫かしらこの子。もしかして自分が王子様に見染められたとか勘違いしてないわよね……)
そんな事を考えて呆然としていると、クララがリエラに向き直った。