初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが
それでも何とか令嬢らしく、ホストの娘らしく振る舞わなくてはと、リエラは折れそうな心を叱咤して気丈を装った。
「シェイド様、庭園が見頃ですのよ。ご案内致しますわ」
「ありがとうございます」
エスコートの為に差し出されたシェイドの腕にそっと指を添え、頑張って暗記した庭園の見どころを必死に喋った。
相槌を打つだけの彼はお世辞にも楽しそうには見えない。
リエラは段々と申し訳なくなってしまい、最後の方は自分も早くこの時間が終わればいいのにと口数も減っていった。
「ありがとうございます。とても楽しかったです」
そんな最後のシェイドの表情はどこかホッとしたようだった。
(……本当に嫌だったのね)
リエラはがっくりと落ち込んだ。
「こちらこそ。拙い案内にお付き合い頂きありがとうございました。そろそろお茶会も終わる頃かしら……会場に戻りましょうか」
「ええ」
端的に相槌を打つシェイドに内心で苦笑して、リエラはそのまま自分の気持ちに蓋をした。
勝手に期待して、浮かれて、全く上手くいかなかったこの時間の為、張り切ってくれた侍女やお膳立てしてくれた父母に申し訳なくて、恥ずかしくなった。