初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが
(誤解なんです! ちょっと手を払っただけなんです! 本当なんです)
切実に言い訳をしたいけれど、焦りが先立ってしまい、どう声を発したらいいのか分からなくなる。必死にあうあうと口を動かしていると、何故かリエラとシェイドの間にクララが飛び込んできた。
「違うんです! 誤解なんです!」
(奇跡のシンクロ!?)
何故かクララと自分の心情が一致し、リエラは度肝を抜かれた。
ぽかんと成り行きを見守っていると、クララはリエラとシェイドの間に身をねじ込んで、彼の腕に手を添えた。
(あっ)
シェイドの眉間の皺が深くなる。
「聞いて下さい。私は彼……アッシュの付き添いでここに来ただけなんですが」
そう言ってクララは一筋涙を零した。
(あ、零れた)
なんて場違いな感想を浮かべつつ、リエラはクララの行動に唖然としていた。
「──それをリエラさんに場違いと罵られて叱られて……悲しくて!」
(え、言ってませんが……?)
わっと泣き出す姿に思わず頭が霞んでいく。
はっ、いけない。
気をしっかり持たないと。
あからさまな被害者アピールに思わず動揺したものの……言ってはいないけれど、その通りなのだからとリエラは気を取り直す。