初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが
07.
本能がやばいと告げ、じりっと後退した背後から、バタバタと憲兵が現れた。
それを見てリエラはぎょっと身体を強張らせる。
「ウォーカー様! 騒ぎがあると通報を受けて来たのですが、これはどういった状況なのでしょうか?」
そう言って憲兵たちは涙を流しシェイドに縋るクララを見てから、訝しげな眼差しをリエラに向けた。
(……あ、終わった)
うるうるした生き物には敵わない。
世間は皆、小動物の味方。しかもリエラはつい先日王族を醜聞に巻き込んだ。その悪名は既に城内にも届いている事だろう。
チラッと未だ伸びたままのアッシュに目を向けて、ここは令嬢らしく自分も気を失う場面だろうかと画策する。
(よし)
ちょっと頭を打ち付けてしまうかもしれないが、もうここは覚悟を決めるべきだろう。ぐっと拳を握り、固く目を瞑った瞬間に、シェイドが憲兵に向け声を張った。