初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが
「でも! 私はアッシュの──!!」
そんなシェイドの沙汰に不満を爆発させ、クララは尚も言い募る。……ああ不敬が重なるのに。なんだか意識が遠のいていくような気がする。
「……恋人だとして何だ? お前が平民である事は変わらないだろう」
そこでクララの表情が変わった。
うるうるした小動物の顔が様変わりし、牙を剥き出した獣のように顔を歪ませる。
「何よ! アッシュは王族なのよ!」
は?
という顔をしているのは憲兵だ。
だってアッシュは王族ではない。
その血も引いておらず、勿論王族の誰かと婚約関係にある訳でもない。
憲兵には平民も含まれているけれど、正直それくらい常識の範囲内だ。だから彼らのような反応は、城に関わる者だとより顕著に表れる反応なのだろう。
何だコイツという彼らの反応に、何故かリエラの方が居た堪れない気分になってしまう。
(顔見知りってだけなのに……)
そんなクララにシェイドが呆れたように溜息を吐いた。