初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが
08. ※ アロット伯爵
「──もう、いい加減許して貰えませんか?」
そう告げるクライド殿下にアロット伯爵は無言でお茶に口をつけた。
「父上……」
息子の声にカップから顔を上げ、改めてクライドを正面から見据える。
第三王子の私室へと場を移し、伯爵は今クライドと対面している。──つまり私的な話をしたいのだとは分かっていたが……セドリー家について、というには些か違う空気に嫌な予感を覚えたのも後の祭り。彼の名を出され、伯爵は取り繕う事も出来ず顔を顰めた。
(レイモンドも共犯だったとは気付かなかった)
そもそも粗忽者であるこの息子にそんな気遣いが出来るとは思っていなかった。そんなレイモンドの成長に意外な形で気がついたが、あまり喜ぶ気はしない。