初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが
09.
「良く分かりましたね……」
そう言って再び眼鏡を外し、シェイドは何故か嬉しそうな顔で微笑んだ。
それを見てリエラは思わず怯んでしまう。
(……えっと、あれ? 余計な一言を鬱陶しがられるかと思ったのに……)
他でもない自分に声を掛けられて、不愉快では無いのだろうか……? そんな疑問が頭を掠める。
眼鏡疑惑については、実は学生時代から疑問視していた。なんと言うか……彼は眼鏡をしている癖に見づらそうにしていたのだ。
あまり視界に入らないように気を遣っていたせいで、むしろリエラはシェイドをよく見ていた。だからわざわざ眼鏡を外して文字を読む姿を見かけては、首を傾げていたのだった。
今だってそうだ。胸ポケットに眼鏡を収めたのはここに駆けつける為で、走るのに邪魔だったから。
多分視力が悪ければ、走る際は眼鏡がないと見えないだろうから。