初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが

「あの、追ってきて頂いて申し訳ありませんでした。それではその……私はこれで失礼致します」
「いえ、待って下さい」
 そそくさと方向転換したリエラの前をシェイドが塞ぐ。その素早い動きに目を丸くする。
「宮廷医の元に行きましょう。腕を診てもらわなければなりません」
「はい? いえそんな、それ程では……」

 思わずアッシュに掴まれた腕を見る。
 キツく握られた場所は未だ跡が残っているものの、別に傷にはなっていない。時間と共に回復するだろう。
 けれど大丈夫だと返事をする前にシェイドはリエラの手をぐいと引いた。
「いいえ、少なくとも至急消毒しなくてはなりません。直ぐに医者の手配をしますので、暫しご容赦ください」
「きゃっ」

 え、なんで?
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