初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが
ベリンダ・レーゼント侯爵令嬢──第三王子、クライド殿下の筆頭婚約者候補だ。
が、
リエラはじと目でベリンダを見つめた。
ベリンダはポゥッと頬を染め、シェイドの顔に魅入っている。どっからどう見ても恋する乙女の眼差しである。
(ベリンダ様……クライド殿下の近くにいるうちに、シェイド様の素顔を見る機会があったの、かも……)
もしかして──クライド殿下の保険に。とか考えているのかもしれない……
シェイドは子爵家だ。
ベリンダがクライドの婚約者になれないのなら、彼の側近を婿に迎える未来もなきにしもあらずで……
(仮にそうなら子爵家のシェイド様には断りにくくて──いや、一人娘のベリンダ様の入婿になればシェイド様は次期侯爵。良縁と言えなくもない……でも……)
何故かもやもやする胸を抑え、リエラは首を俯けた。
「大丈夫ですのシェイド様? まさかお怪我を? 一体どちらを?」