初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが
10.
「──全く、医務室で騒がしい事この上ない」
そう話すのは、先程リエラの急患扱いに呆れ果てていた、老医師のウォム先生だ。
確かに医療現場で先程から申し訳ない。リエラははっとウォム医師に向き直った。
しかし医師の苦言にベリンダは不愉快そうに眉を顰める。
「申し訳ありません」
そして何故か謝ったのはシェイドである。
リエラの眉間の皺が深くなる。
「あなたが謝る必要などありませんわシェイド様! 平民の医師に謙るなど、貴族にあるまじき行為ですのよ!?」
喚くベリンダにウォム医師は冷ややかな眼差しを向けた。
「……その通り、ここは身分による貴賤を陛下により免除されている唯一の場所でございます。従ってあなたのように健康で、ましてや患者の付き添いでも見舞いでも無い輩は即刻ご退去願いたい」
「は……?」