初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが

 案の定ベリンダは一瞬怯んだものの、直ぐに口元に嘲りを浮かべ捲し立てる。

「何を仰っているのやら? あなたは貴族と平民の区別もご存知ないの? 流石醜聞を撒き散らすお方は知識も薄いようで、見るに耐えない事だわ」

 そう吐き捨て取り巻きに一瞥をくれる。
 当然彼女たちは「本当に」「みっともない」「愚かですこと」と、頷いた。

 類は友を呼ぶものである。
 リエラは思わずふふふと笑い声を漏らした。

「な、何がおかしいのよ!」
 彼女は自分が笑うのはいいが、人に笑われるのは我慢がならないのだろう。カッと顔を赤くする様を冷ややかに見据え、リエラはゆっくりとベリンダに近付いた。

「学園で──医務室は医療行為を優先する為に、貴賤を問わぬ場と教えて頂いたというのに、ベリンダ様はもう忘れてしまったのですか?」
 伯爵令嬢らしく微笑みを絶やさずに。けれど同時に獲物を逃がさないという気概の元、リエラは真っ直ぐにベリンダを見据えた。
「は? 何、そんな事? そんなの……」
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