初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが

 王宮の庭園ではラベンダーが咲き誇っていた。
 王妃の庭園は薔薇を基調に、それぞれの王族も自身の好みで庭園を彩っていると聞く。
 ここは外来用の庭園の一つなのだそうだ。
 きっと城内の庭園はそれぞれ被らないよう造園しているのだろう。

 ラベンダーの色と香りにホッと気持ちを和ませていると、シェイドは庭園内の噴水の前で足を止めた。
 びくっと身体を強張らせるリエラにシェイドは切なげな顔で口を開いた。

「その、リエラ嬢。どうか謝らないで下さい。……私はあなたに感謝こそすれ、決して怒ってなどおりませんから」

 え

「──え?」

 リエラは目を見開いた。
 だって。
 怒っていない?
 何故?
 そして感謝?

 ……何に?

 リエラの頭は今日、何度目か分からない混乱の渦に陥った。
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