初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが
もうあんな思いをしたくなくて、祖父母に無理を言い領地に逃げ込んだ。父母と距離を置きたかった。
そうして学園生活に入る時、野暮ったい格好で身を隠す事にしたのだ。
思った通り、パッとしない田舎出の子爵家なんて、誰も相手にしなかった。
そんなもんかと自分の本来の価値を鼻で笑い、まだ頭に残るリエラの言葉が頭に浮かんだ。
彼女はシェイドにもっといい出会いがあると言った。
それはシェイドの胸を甘くくすぐって、いつからか、じんわりと温かい思いを抱かせていた。
自然と努力したくなった。
次に会った時こそ、恥ずかしくない姿を見て欲しい。
(考えてみれば僕は何の努力も抵抗もしてこなかった。きっとこれは転換期だ。リエラ嬢が授けてくれた啓示なんだ)
いつからかシェイドの中でリエラの価値が押し上げられ、残った言葉がそう変換されていったのだった。
(変わりたい)
そしてシェイドは努力した。誰に笑われても揶揄われても構わないくらい、勉強にしか興味を示さなかった。
『子供の頃はもっとカッコよかった気がするんだけどね?』
学園に入学後にそんな言葉が聞こえてきても何も感じないくらい、周囲の期待も眼差しも、シェイドにはどうでもよくなっていった。