初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが

「──リエラはですね、甘えてるんですよ! 今時婚約者を親任せにするからなんて理由で社交を避けて! 貴族令嬢として家に入り家政を行う以上、避けて通れない道だというのに!」
 
 クライドは二年生になってから生徒会長に抜擢された。普通、王族がいるのに生徒会長に立候補する者はいない。
 しかしクライド本人の意向もあって、一年間は生徒会の補佐を行っていた。翌年に生徒会が一新される際の人事はクライドが担ったが、入りたい者は当然多かった。

 中でも下位貴族であるシェイドへの妬み誹りはあからさまで、リエラの兄レイモンドからも入室時に面白くなさそうな顔を向けられた。
 けれどその様子を見るに、リエラの事は関係なさそうだった。

 レイモンドを呼び出した理由は生徒会と関連する役割の確認。彼は前年度から委員会に所属していた。
『クライド殿下が生徒会長になったばかりなので、去年の各委員会の状況を確認している』という名目での呼び出しだ。
 
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