初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが
「たった一度の失敗でこうして身を滅ぼすものなのね、私も気をつけましょう」
「そうだね、幼い頃から教育係が口を酸っぱくして言ってきた事は全て正しかったんだな。彼らに改めて礼を言いたい気分だよ」
勝手に人の人生を反面教師にしないで欲しい。
「挽回の機会はもう得られないのでしょうか……」
ぽつりと呟くとクライドが肩を竦めた。
「それは……まずはリエラ嬢次第かなあ……?」
クライドの返事にアリサがそうねと頷いた。
「相変わらず心どころか物理的な距離が一向に縮まらないけどね」
「うぐっ」
痛みに胸を押さえ項垂れた。
相変わらず遠慮なく心を抉る。……本当の事だけれど。
そんな二人が残念そうに相槌を打つ姿から、シェイドは目を逸らして蹲った。
(こんなに頑張ったのに……死にたい)
そんなシェイドの心情に関係なく、二人は視線を交わす。
「……まあ、結局は伯爵の心一つな訳だけど……」
「そうだな……或いは……リエラ嬢が堕ちてくる、とか?」
どこか不穏な空気を孕んだそんな会話は、蹲ったままのシェイドには届かなかった。