初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが

14. ※ クライド


 ──五年前

 クライド・エリィク・フォンレスター第三王子が学園という準社交の場に入った。
 齢十四歳。
(今後の縮図の構成に、自分の人生を担う為の人選……)
 王族は気が抜けないなあと新入生代表の壇上に上がりつつ、クライドは内心で溜息を吐いていた。
 
(遊びたい。サボりたい)

 けれど王族の手本のような兄二人を見ていると、そんな弱音も吐けなくなってしまう。
 きっと自分は根が真面目なのだろうと諦める事にして、遊びやサボりは自分なりの方法で行う事にした。

 学園在学中に側近を選ぶ。

 ──面白い奴にしよう。

 学園在学中に婚約者を選ぶ。

 ──面白い奴にしよう。

 おもちゃ代わりに遊べて、良い暇つぶし、サボりの口実にする為に。

 だから一年間は猫を被って人を観察に勤しんだ。そして二年になってこれはと思う人間を選び抜いた。
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