初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが
(……目立ちたく無かったのでは?)
首を傾げつつ観察を続ければ、どうやら想い人がいるらしい。こいつは、ただ一人に認められたくて、努力している奴だった。
何度かつついてようやく口を割らせて、彼女が入学する時にその顔を見た。
(……大人しそうな子だな)
印象としてはそれくらいだった。
けれどアロット伯爵家といえばこの国では由緒正しく資産も充分な家だ。当然縁付けたい家は一定数あるだろうから、シェイドが努力するのも頷けた。
ただ生徒会にいる以上、彼が自分の側近になる未来は固い。直に伯爵も首を縦に振るだろう。
二人の始まりを知らない頃だったから、クライドはそう結論付けた。ついでに学園内でも猛攻を繰り広げてくるベリンダがいい加減に鬱陶しくなり、彼女の前でワザとシェイドの眼鏡を払ってやった。
少し盾に使うくらい構わないだろう。
思った通りシェイドの綺麗な顔はベリンダのお眼鏡に適ったようで、ベリンダはクライドとシェイドの両方に色目を使うようになった。
(馬鹿な奴……)
家柄が良く見目も悪くないものだから自分に自信がある令嬢。だから自分が一番で、その上何をしても許されると思っている。
王族の婚約者候補という立場にありながら他の男に色目を使う。淑女として致命的であるといえるそんな事すら自分は構わないという謎の自信。
レーゼント侯爵家の内情が透けて見えるというものだ。
彼女の話は兄たちから話を聞いていたものの。