初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが
父が彼女の家柄を考慮して悩んでいたのは知っていたから、面白そうなら娶ってもいいかなと思ってはいた。だが実際会ってみれば面白がる余裕もないというか、気が遠くなりそうなくらいにアレで──……
(あんなもん妻に迎えたら身の破滅だ)
母が甥の評判に度々悩まされているのを知っているから余計。妻は賢く品のある女でなければ。
彼女にはいずれ自滅してもらうにせよ……
なんて理由もあり、婚約者は割と早い段階でミレイ侯爵家次女のアリサに目を付けていた。
アリサは勤勉で実直だが、気が強いのと少し口が悪い。
前者は王族として良い資質だろう。気が強いのは自分の好みだ。泣かせたい。口が悪いのも公の場で控えるようにすれば問題ない。
ただ彼女には既に親の決めた五歳上の婚約者がいたので、そいつには頭と身持ちの悪そうな女を送り込んでおいた。
すっかり仲を深めた二人が夜会で間違えて王族の休憩室で逢瀬に興じているのを次兄に見つかり、破婚したのは私たちが卒業間近の十七歳の頃。
王族が率いる生徒会、副会長の醜聞は広がらないよう配慮され、箝口令が敷かれた。