初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが
けれど萎れたアリサを見て良い気分にはならなかった。そこに彼女の元婚約者への気持ちが透けて見えるからだ。仕向けたのは私でも、その心は自分へは向いていないのは知っていた。だから暫くは彼女を甘やかそうと誓った。
おかげで卒業して一年も経つのに未だに私には婚約者が決まらない。断じて自業自得ではなく、アリサの気持ちに寄り添う結果こうなっただけだ。
だから婚約者は既に内定しているのだが、彼女の心の傷を考慮して、発表はもう少し先になる。
最近はやっと彼女が心を開いてくれて嬉しい。
自分に春の兆しが見えた頃、そういえばシェイドは何をやってるんだろうかと思い至った。
生徒会の仕事に猛然と励み、成績も上位をキープ。教師の覚えもめでたく、生徒からの信頼も得るようになった。
その自信を抱き、アロット伯爵家にリエラ嬢のエスコートを願い出る手紙を送るとか言っていた。名義はタガが外れた父ではなく祖父を頼ったと聞いているから、門前払いはないだろう。
けれど結果は惨敗。
地に臥したシェイドをアリサと二人、残念な気持ちで眺めた。
……因みにこれは我々の卒業パーティーの同伴の許可である。
諦めない姿勢は尊敬に値するが、相談くらいしてくれれば根回しに協力したのにと思った。