初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが
リエラはハッと固まった。
シェイドの心情──
少し考えれば分かった事だったろうけれど、誰にも相談できないまま時を過ごしてきたリエラには、想像もつかない事だった。
クララもベリンダも、シェイド様の顔に心を奪われていた。十一歳の子供が、あんな風に常に秋波を送られていたら、気が滅入ってもおかしくないのに……
彼はずっと、子供の頃から辛い思いをしていたのだ。
「……いえ、私もまた嫌がるあなたに言い寄ったのです。他のご令嬢たちと同じですわ……」
リエラは項垂れた。
シェイドの嫌がる事をしてしまったというなら、自分だって同じだから。
けれどシェイドはリエラの手をきつく握り直し、きっぱりと否定した。
「いいえ違います。あなたはずっと誰のものにもならなかった。あなたなら、なろうと思えばなれた筈です。学園でも令息たちに声を掛けられていたでしょう? でもあなたはそうしなかった。だから……あなたは本当に一途に俺を望んでくれたのだと……嬉しくなりました」
「っ」
かあっと顔に熱が上がる。
物は言いようだ。引き摺っていただけなのに。
流石に恥ずかしくなり自由な方の手で顔を覆った。
「し、しつこくてすみません」
「いいえ嬉しかったです。同時に自分の愚かさを呪いました。ずっと待ってた人に気付かずに、俺は……」
そう声を詰まらせるシェイドを指の隙間からそろりと見る。眉間に皺を寄せるその表情に胸が軋んだ。
「その、何度も言いますがお互い子供だったのです。もうお気になさらないで……」
シェイドはホッと息を吐いた。
「ありがとうございます。その、リエラ嬢は……まだ俺が嫌いですか?」
「嫌いなんて!」