初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが
(ちょっとお父様!)
頭を下げたままのシェイドに父は鼻を鳴らし、リエラの手を取りその場を去る。
頭を下げたままのシェイドを振り返りながら、リエラはムッと父を見上げた。
確かに供もいない状況でシェイドと二人きりになってしまったけれど……シェイドはクライド殿下の側近だし、父も兄もいなくなってしまったからじゃないか。
「そう睨まないでくれ」
唇を尖らせていると、娘の不満を横顔で受け止めた父が拗ねた口調で口を開いた。
「ですがお父様、シェイド様は何も悪くありません」
その言葉にぶすりとした顔を向け、父ははぁと溜息を吐いた。
「仕方ないだろう。いくら幸せを願ったところで……これは娘を持つ父親の正当な反応だ」
「……もう」
過保護なお父様。
内心で溜息を吐きつつも、リエラは嬉しくなる。
(でもシェイド様はまた会いに来て下さるとおっしゃった。……私との未来を見据えた話をしに……)