初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが

 半年後、王家が所有する聖堂の一つで、身内だけのささやかな婚約式が開かれた。

 そこに第三王子であるクライドと、その婚約者であるアリサ・ミレイ侯爵令嬢が列席してあったとあり、彼らの婚約は注目されるものとなった。
 アリサはびしりと姿勢が良く、初対面でもスパスパものを言う令嬢だが、不思議とリエラに向けられる眼差しは優しいものだった。


「リエラ、とっても綺麗だ」
 幸せそうに顔を蕩かせて、シェイドはリエラの腰を引き寄せた。
「シェイド様も、とっても素敵です」
 嬉しそうに笑いかけるシェイドの身なりからは野暮ったさが抜け、輝くような容姿は聖堂で際立っていた。

 伊達眼鏡のシェイドに慣れてしまったリエラには思うところがあったのだが、シェイドは譲らなかった。
『誰にもつけいる隙を与えたくないんだ。もし完璧無比な相手が現れたとしても、絶対に君に選んで貰えるように努力するけれど』

 嬉しくて恥ずかしくて、自分もシェイドの隣に立つに相応しい人になりたいと、苦手だった社交を頑張ろうと意気込んだのだが、程々でいいと複雑な顔をされた。

「社交に出たら、君は注目されてしまうだろう? それは嫌なんだ……」
「……シェイド様ったら」

 自分たちはなんて似た者同士なんだろうと笑ってしまう。
 一番好きだから、一番不安で……

「あなたにの隣に、堂々と立ちたいのです。私もあなたを愛しているから」

 そうして真っ赤になったシェイドの頬に唇を寄せた。
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