冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
プロローグ
横浜のみなとみらいエリアに新しくできた高級ホテル『クレシャリーテ』。美しい夜景が一望できる高層階の客室には間接照明のほんのりとした明かりが灯っていた。
高級感のあるキングサイズのベッドに横たわる私をひとりの男が組み敷いている。
宮條充、三十四歳。
クレシャリーテホテルを始め、国内外に数多くのホテルを展開する巨大企業『グレースフルパレスホテルグループ』を経営する宮條家の御曹司であり、現社長を務める男。
そんな彼の妻である私の名前は三沢菫、改め宮條菫。先月に大学を卒業したばかりの二十二歳で、実家は旅館を経営している。
私たちは今日、婚姻届を提出して結婚式を挙げたばかり。今夜はいわゆる初夜というものを迎えているのだけれど……。
「あ、あの。宮條さん」
「充だ。夫を名字で呼ぶ妻がどこにいる。それに、今日からきみも宮條だろ」
どこか冷たさを感じさせるクールな目元に長い睫毛。中性的で美しい顔を持つ充さんが眉間に皺を寄せて渋い顔を作る。
親同士が決めた政略結婚で結ばれた私たちは、まだ数回しか顔を合わせたことがない。けれど、私は彼がたまに見せるこの不機嫌な表情がちょっと苦手だ。
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