冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
どこの大学だ? 名前は? また会えるだろうか……。
そんなことを思いながら窓の外に視線を投げ、無意識に先ほどの彼女の姿を探していた。
ああいう子が妻なら悪くないかもしれない。ふと、そんなことを思う自分がいた。
それからもふとした瞬間に菫のことを思い出しては、また会えないだろうかと彼女に対する想いを募らせる日々。
それくらい菫との出会いは俺にとって衝撃的だったし、運命のようなものを感じていた。
けれど、名前すら知らないのだから探し出す術もなく、おそらくもう二度と会えないのだろうと諦めていたある日、奇跡が起きた――。
『とっても素敵なお嬢さんを見つけたのよ』
菫と初めて会ってから三カ月が経った九月。
ここ一年の間で立て続けに縁談を断り続けている俺の結婚をとうとう諦めた母が、そのターゲットを弟の悠に変えて新たな縁談の話を持ってきた。
その相手が菫だった。
どうやら母の落としたイヤリングを一緒に探したことをきっかけに母に気に入られ、宮條家の嫁に選ばれたらしい。
そのエピソードを聞いたとき、高齢女性にぶつかった男に対して謝罪するよう立ち向かっていった彼女らしい善意の行動だなとますます菫のことが気に入った。