冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~

 母は名前だけを頼りに興信所を使って菫を探し出し、素性を調べた。

 地方にある老舗旅館の娘だとわかると、ホテルを経営する宮條家との釣り合いも取れると判断。悠の結婚相手として三沢家に縁談を申し込み、三沢家もふたつ返事で了承をした。

 悠と菫の気持ち次第ですぐにでも結婚に向けて動き出せそうなところまで話は進んでいたが、あとからその縁談のことを知った俺が横取りをした。

 ずっと会いたいと思っていた女性と思いがけずに再会できたのだから当然だ。奪うしかないだろ。

 菫を気に入っている母は、彼女が宮條家に嫁いでくれるのならば相手は悠でも俺でもどちらでもいいらしく、悠もそれほど結婚に乗り気というわけでもなかったので、宮條家の中ではあっさりと菫の相手は俺に変わった。

 こうして迎えた菫との初めての食事の日。

 三沢家側の伝達ミスでどうやら菫には結婚相手が俺に変更になった連絡がうまく伝わっていなかったらしい。悠が現れるものだと思っていたのか、俺が現れて彼女は困惑しているようだった。

 それに、菫は俺のことを覚えていなかった。『初めまして』と挨拶されたときは少し胸が痛んだが、ほんのわずかに顔を合わせたくらいでは記憶に残らないのだろう。

 俺のようにあの出会いに運命を感じていなければ……。
< 103 / 181 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop