冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~

 *

 菫との初めての食事の日のことを回顧しながら帰宅すると、リビングに足を踏み入れた瞬間、珍しく彼女のほうから俺に声を掛けてきた。

「充さん。なにか欲しいものはありますか」
「欲しいもの?」

 最近は視線を交えるどころか、会話すらしていなかったのに。どういった心境の変化があったのだろう。

 唐突な問い掛けに思わず眉間に皺が寄る。そんな俺を見て菫の肩がピクッと跳ねた。

 俺は、こういうところがいけないんだろうな。愛想をよくしろと朝の社長室で悠から言われたことを思い出した。

 指で眉間に触れると、そこを揉むようにして自然とできてしまう皺を消す。

「お疲れですか?」

 そんな俺を労るような表情で見てくる菫が愛しくてたまらない。結婚して、一緒に暮らしてから彼女への愛は深まるばかりだ。だが、素直になれない俺はぶっきらぼうな言葉しか返せない。

「疲れてはいない。それよりも、欲しいものとはどういうことだ」

 スーツのジャケットを脱ぎながら尋ねれば、菫はためらいがちに口を開く。

「もうすぐ充さんの誕生日ですよね。なので、なにかプレゼントを贈りたいと思って」
「俺に?」
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