冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
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菫との初めての食事の日のことを回顧しながら帰宅すると、リビングに足を踏み入れた瞬間、珍しく彼女のほうから俺に声を掛けてきた。
「充さん。なにか欲しいものはありますか」
「欲しいもの?」
最近は視線を交えるどころか、会話すらしていなかったのに。どういった心境の変化があったのだろう。
唐突な問い掛けに思わず眉間に皺が寄る。そんな俺を見て菫の肩がピクッと跳ねた。
俺は、こういうところがいけないんだろうな。愛想をよくしろと朝の社長室で悠から言われたことを思い出した。
指で眉間に触れると、そこを揉むようにして自然とできてしまう皺を消す。
「お疲れですか?」
そんな俺を労るような表情で見てくる菫が愛しくてたまらない。結婚して、一緒に暮らしてから彼女への愛は深まるばかりだ。だが、素直になれない俺はぶっきらぼうな言葉しか返せない。
「疲れてはいない。それよりも、欲しいものとはどういうことだ」
スーツのジャケットを脱ぎながら尋ねれば、菫はためらいがちに口を開く。
「もうすぐ充さんの誕生日ですよね。なので、なにかプレゼントを贈りたいと思って」
「俺に?」