冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
それでも結婚して夫婦になるからには俺は菫を全力で愛するし、大切にしたいと思っていた。
菫も少しずつ俺に心を寄せてくれることを期待していたのに、どうやら彼女にはその気はあまりなさそうだった。
結婚はするけれど、俺のことは好きにはなれない。
菫にそう宣言された俺は、自分の気持ちを封じ込めることにした。
俺は菫が好きだけれど、菫は俺を好きでなくても構わないし、無理に好きになる必要もない。ただ、俺の妻としてそばにいてくれるだけでいい。それ以上はなにも望まないから。
結婚して迎えた初めての夜。俺は、菫を抱く前に自分の気持ちを彼女に伝えた。
『結婚して夫婦になったとはいえ、俺はきみの心まで欲しいとは思っていない』
それなのに、今は菫の心が欲しくてたまらない。俺に振り向いてほしい。俺に興味を持ってほしい。俺を好きになってほしい……。
「菫」
キッチンで料理の続きをしている彼女に声を掛けると、驚いたように振り向いた瞳と目が合った。まな板の上で野菜を切る手を止めた彼女が俺の言葉を待っている。
「欲しいものを言えば、なんでもくれるのか」
「え?」
「誕生日プレゼントの件だ」
そう付け足せば、菫はハッとしたように頷いた。