冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
だから忘れているわけではないはず。それだとやはり仕事でなにかトラブルが起きたのだろうか。
そんなことを考えながら、時計の針が八時半を差した頃、ようやく玄関の扉が開く音がした。
充さんが帰ってきたのだ。リビングから飛び出した私は、廊下を小走りで進み、玄関へと向かう。
「おかえりなさ……えっ、どうしたんですか!?」
帰宅した充さんは靴を脱ごうとして、その場に崩れるように座り込んでしまった。
「大丈夫ですか⁉」
隣にしゃがみ込んだ私は、俯いている彼の顔をそっと覗き込む。けれど、ふいっと逸らされてしまった。
「大丈夫だ。問題ない」
よろよろと立ち上がった充さんが私の横を通り過ぎて、おぼつかない足取りで廊下を進む。今にもバタンと倒れてしまいそうだ。
「充さん。もしかして、体調悪いですか?」
リビングに入った彼がソファに腰を下ろす。背もたれによりかかると、目を閉じて息苦しそうに大きく息を吐き出した。よく見ると頬がほんのりと赤く染まっている。
「ちょっと失礼します」
隣に座った私は、手を伸ばして充さんのおでこに触れた。そこはすぐにわかるほど熱を持っていて、やはり発熱しているのだろう。