冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
ふと今朝の充さんの様子を思い出してみると、軽く咳込んでいたかもしれない。そのときに気付いてあげればよかったのに、今夜の誕生日会のことで頭がいっぱいだった私は充さんの体調の変化に気付くことができなかった。妻として失格だ。
「――今夜は早めに休む」
充さんがふらふらとソファから腰を上げる。そのままリビングから出ていってしまった。
慌ててそのあとを追い掛け、寝室のドアを小さく開いて声を掛けるけれど「ひとりにしてほしい」という言葉が返ってきたので、私はそっと寝室のドアを閉めてリビングに戻った。
充さんは大丈夫だろうか。ひとりにしてほしいと言われてしまったので、無理に部屋に入るわけにもいかない。あの様子だと食欲もないのだろう。
とりあえず私は夕食がまだなのでビーフシチューを温め直して食べることにした。
ケーキはさすがにひとりでは食べられないので冷蔵庫にしまう。味は落ちてしまうかもしれないけれど、明日ならギリギリまだ食べられるだろう。